なろう系VTuberリイエルのブログ

ネット小説紹介のVTuberがネット小説について語るブログです

リイエルのネット小説概論 (3) サイトごとの分析 (2)

2019年8月25日に定期配信#11として「リイエルのネット小説概論」を発表させてもらいました。

この放送ではリイエルが思うネット小説の現状を分析しました。 ブログではこの分析を更に深堀りしてわかりやすくまとめたものを、披露したいと思います。

まとめ記事3回目は、サイトごとの分析の続きです。よろしくおねがいします。

この連載の目次はこちら

ネット小説サイトのパワーバランス

ネット小説サイトのパワーバランスはこうなっていると思います。

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今回は二番手、三番手について話していきたいと思います。

デファクトスタンダード

前回の記事で説明しておりますので、そちらをご覧ください。

二番手争い

  • アルファポリス
  • カクヨム

アルファポリス1539万PV、カクヨム916万PV*1と、一定地位をそれぞれ確立している2サイトです。

アルファポリス

出版社アルファポリスが運営する、アルファポリスが作品を発掘するためにつくられている投稿サイトです。

アルファポリスのPV数は、漫画やビジネスのコーナーがあり、さらに書籍紹介もあるので一概にカクヨムと比較することは難しいと考えられます。 さまざまなコンテンツが1つのサイトのドメインで行われているため、純粋な小説閲覧サイトとしての数字を比較するのは難しいと考えます。 ですが、それを抜きにしてもPV数はカクヨムを大きく上回っており、一定の地位を獲得していると考えられます。

ただ「ポストなろう」としてうまくいっているかというと、そうでもないような感じがあります。 なろうとは大きく作品傾向が異なっており、独自の文化圏を持つプラットフォームとして扱うのがよいのではないかと思う感じです。

投稿作品のダイジェスト問題など、出版社としてのアルファポリスをめぐる問題はたくさんりますが、今回は割愛します。

最近では「小説家になろう」にありそうだけれど、掲載されていないような作品を自社プラットフォームからピックアップして書籍化し、その上でコミカライズする手法を行っているようです。 ですので、ネット小説の本流というよりは、別のエコシステムをアルファポリス内で構築しているとみなす方が良さそうな気がします。 このあたりが、他のプラットフォームと少し違うところです。

ただ、異世界〔恋愛〕ジャンルはレジーナブックスがかなり強いイメージが合ったのですが、先述の通り「小説家になろう」がかなり強くなってきているのでなにか起こっているのではないかと危惧しています。

私はアルファポリスの掲載作品には詳しくないので、これ以上の言及はやめておきます。

代表作品

ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり〈1〉接触編

ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり〈1〉接触編

詐騎士 (レジーナブックス)

詐騎士 (レジーナブックス)

カクヨム

KADOKAWAとはてな*2が運営する、もう老舗と言ってもいいサイトです。

いま、カクヨムは「ポストなろう」として永遠の二番手ポジションを確立したと思っています。

カクヨムは、どちらかというとなろうで流行らないタイプの小説に強いイメージが今までありました。 たとえば、異世界転生の中でも、一風変わったファンタジー世界だったりとかです。

また、カクヨムは現代恋愛ものにかなり強いイメージがあります。

kakuyomu.jp kakuyomu.jp kakuyomu.jp kakuyomu.jp kakuyomu.jp

本当に、つい最近までずっとそう思っていたんですが、2019年5月のなろうの異世界〔恋愛〕ジャンルのに押し出されるような形で、普通のファンタジーものが強くなってきました。これらはなろうと同時投稿されている作品が多いです。*3

kakuyomu.jp kakuyomu.jp

しかし、そういう事情もあるとはいえ、作品の多様性もかなりあって「カクヨムの色!」というのが薄いのも特徴と言えるかもしれません。

代表作品

kakuyomu.jp

横浜駅SF (カドカワBOOKS)

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kakuyomu.jp
ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 (角川スニーカー文庫)

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ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 (1) (角川コミックス・エース)

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継母の連れ子が元カノだった 昔の恋が終わってくれない (角川スニーカー文庫)

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kakuyomu.jp kakuyomu.jp 魔石グルメ ~魔物の力を食べたオレは最強!~(Web版)
魔石グルメ 魔物の力を食べたオレは最強! (カドカワBOOKS)

魔石グルメ 魔物の力を食べたオレは最強! (カドカワBOOKS)

seiga.nicovideo.jp kakuyomu.jp おめでとう、俺は美少女に進化した。
おめでとう、俺は美少女に進化した。 (カドカワBOOKS)

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kakuyomu.jp ちびっこ賢者、Lv.1から異世界でがんばります!【Web版】
ちびっこ賢者、Lv.1から異世界でがんばります!

ちびっこ賢者、Lv.1から異世界でがんばります!

seiga.nicovideo.jp
ちびっこ賢者、Lv.1から異世界でがんばります! 1 (電撃コミックスNEXT)

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三番手争い

  • ノベルアップ+
  • マグネットマクロリンク

この2つが強いと思われる根拠は、最近リリースされたサイトを調査なさっている夕月悠里さんのこのグラフから。

twitter.com

投稿数の伸びが、この2サイトだけ飛び抜けている感じがします。 マグネットの伸びもも鈍化しているとはいえ、ポストカクヨムを狙っていけるであろうサイトはこの2つだと思っています。

(最近のスコップは小説家になろうとカクヨムを中心にしているため、新興サイトの傾向などについてはあまり詳しくありません。ご了承ください。)

ノベルアップ+

ホビージャパンが運営しています。

HJ文庫/HJノベルスが抱えている作家をフル活用して、独占コンテンツを中心に作品数を伸ばしています。 逆に言うと独占コンテンツ以外が弱いので、作家の宣伝力が物を言うサイトになっている気がします。 おそらく、カクヨムと同じで少女小説ブームに押し出されたちょうどいいタイミングで出た新サイトというのが大きいのかなと思います。

もう一つの特色として、課金でポイントを買って作品に投資する機能があるところです。いわゆる投げ銭サービスです。 これに関しては賛否両論あるかと思います。

投げ銭系でいうと、例えばニコニコ動画ではニコニ広告をすると動画に投資することができました。 実装当初はランキングの計算式にニコニ広告に投資されたポイントを利用していました。 ですが、ランキング操作目的でニコニ広告が使われてしまい、最近ランキングの計算式から外されました。*4

投げ銭があるサービスということもあり、不正行為への処罰は厳重かつ大々的に行われています。

また、ノベラちゃんというTwitterアカウントで積極的にユーザーと対話をする姿勢を出しているのも、最近のWebサービスとしては珍しい部類に入ると思います。

twitter.com

今後どうなるのか、楽しみなサービスです。 ただ、出版社運営ということで、他の出版社での出版チャンスみたいなものがあるのかどうかが少し気がかりです。

マグネットマクロリンク

UDリバースという、今回唯一の出版社が絡まない系ベンチャー企業(だと思われる)が運営しているサービスです。 ベンチャー企業ということもあり、以前は出版部門がなかったのですが今年の4月にサンクチュアリ出版と協力して出版部門を設立しています。

他のサイトと大きく違う点を挙げるとすると、表紙画像が設定できる点があります。

また、有償ポイントが必要な公式連載や投げ銭機能などもあり、最近のCGMサイトにありがちな機能は一通り揃っている印象があります。

ユーザーの貢献を「磁力」という形で表現しており、ポイントを様々な形で可視化しているサイトです。

代表作

www.magnet-novels.com

ノブリス・オブリージュ  〜引きこもり令嬢が何故聖女と呼ばれたか (MAGNET MACROLINK)

ノブリス・オブリージュ 〜引きこもり令嬢が何故聖女と呼ばれたか (MAGNET MACROLINK)

サイトごとの分析 まとめ

小説家になろう以外で注目できるサイトについて、まとめてみました。

小説家になろうは出版社の色があまりないサイトではあります。 ですが、それ以外のサイトについては運営母体に出版社が絡んでいるケースが多く、お抱えの出版社や編集部があるサイトが多いです。 唯一例外的に他社からの出版が多いのがカクヨムぐらいかなと思います。*5 投稿される方はそのあたりも加味しながらサイトを選んでみてはいかがでしょうか?

次回はきになる「モバイル比率」についてまとめたいと思います。よろしくおねがいします。

*1:SimilarWebによる2019年7月の推定データ

*2:はてなさんにはブログではお世話になっております。これからもよろしくお願いします。

*3:この傾向については前回の記事を参照ください。

*4:ランキングから外された件については、ニコ動ランキング改変2019にまとめられています。

*5:https://kakuyomu.jp/publication/に書籍化作品がまとめられていて、KADOKAWA系列以外からはガガガ文庫から一冊、ダッシュエックス文庫より一冊出ております。そもそもKADOKAWA系列とはいっても編集部が一つではないのが、特色とは言える気がします。

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